介護記《排泄》part3
寝たきりで腸の動きが悪いため、弱い浣腸を人肌に温めて、入れてからお腹をマッサージし、横向きになってヘルパーさんのかけ声に合わせ、力んだり休んだりして出していました。
私も何度も立ち会って見ていました。
ヘルパーさんは絶えず声かけをしていました。
『サヨさんじょうずよ~。』
『わあ、いいうんちだあ。』
と、明るく大きな声で話しかけ、くさいとかは言いませんでした。
出したあとは手際よくペットボトルのような容器を使ってお尻も洗ってくれ、サヨさんもすっきりと気持ち良さそうでした。
その無駄のない動きと技に、プロは凄いな~と感心しました。
サヨさんの最期は病院でしたが、男のお医者さんは、力むとよくないんじゃないかと尻込みして、なかなか浣腸をしてくれませんでした。こういうことは、肝っ玉の座った女性にかぎります。
…………………………
さて、サヨさんの排便方法を見てきた私は、自分にも応用していたのですが、市販の浣腸では刺激が強く、体にも負担があるため、自然食品で促そうと試みました。
効果があったのは、オリゴ糖で、ビートグラニュー糖といわれるものです。
国産のものがインターネットで売られていました。
胃が大丈夫な方は、プルーンエキスをぬるま湯に溶かして飲むのもいいかもしれません。
お医者さんに、弱い漢方薬、マシニンガンをもらっていたこともありました。
2015年現在は、より負担も少なく、副作用もないスイマグを飲んでいます。
寝たきりで腸が落下し、動きが悪いため、お世話になっています。
ベッドの上で汚さずに排便をするというのは、緊張して、力みも難しいです。
人を呼ばなきゃならないのも心の負担です。
汚いものですから。
倒れて2年半たってから、立ってトイレに行くことも出来るようにはなりましたが、体調が悪いときはオムツでした。
今も、トイレに立てずオムツにすることがあります。
ただ、外出中の心配は少なくなりました。
介護の際、一番の困難は、排泄の手間と、心のケアではないかと思います。
サヨさんの場合は、ヘルパーさんに頼むことで、母は暗くならずに介護を続けられたのだと思います。
私も開き直る事ができてましたので、私自身が暗くならずに汚物の入った袋を、『おみやげ取りに来て~。』と言えていました。
夫も嫌がらずに処理してくれたことが救いでした。
私の排泄の仕方を参考までに書いておきます。
まず、尿の場合は、お尻の下にオムツ取り替え用シートを敷いて大きなオムツを広げ、その上に尿とりパッドをあててします。
そうすると万が一漏れても安心ですし、パッドで済ませられて経済的です。
そしてシートに直接肌が当たらないので、冷たくないという利点があります。
便の場合は、同じようにシートを敷いて、大きなオムツに便を出します。
固形で出てくれた時は、お尻を拭いて、濡れたお尻拭き用ティッシュできれいにしてから、交換して終わりですが、下痢の時は、出した後、まず新しいオムツに取り替えるのですが、ここで少しテクニックがいります。
寝たきりの人は、腰を浮かす事ができませんので、横向きにして、オムツを半分にして差し込み、反対の横向きになってもらって、差し込んだオムツを引き出します。言葉でわかりにくくてごめんなさい。
そうしたら、トイレットペーパーでお尻を拭いて、ペットボトルを使ってお尻を洗います。オムツの上ですから大丈夫。
濡れたお尻を拭いて、新しいオムツに取り替えます。
排便は、本当に手間がかかります。
下痢の時なんかは最悪でしたね。漏れてしまったことも何度もありました。
この経験で、排泄を介護されている方の心の苦しみを知りました。
介護している方の苦労も知りました。
実際の肉体の大変さ、疲労もわかりました。
排泄は汚い、臭い、と大変なものですが、一番大切なものでもあります。
この排泄の負担を少なくして介護が出来たら、介護全体の負担も少なくなると思います。
第三者に頼むこととか、食事で臭いが少なくなる工夫とか、取り替えの手順を学ぶとか、心のケアになる言葉を調べるとか、色々工夫していくことが大切だなと感じました。
介護する方が、介護される方の体の負担と心の葛藤を理解するためには、実際にご自分でオムツをして、排尿、排便してみることが一番です。
そして、それを人に替えてもらってみてください。
できますでしょうか。
どんなに恥ずかしく惨めな気持ちになるかわかると思います。
思いやりと言葉で言うだけでなく、自分で体験してから介護に挑めば相手の身になって出来ると思います。
私は、1度でもいいからしていただきたいと思います。
そうすれば、寝たきりの病人や老人が、どんな葛藤を越えているかが分かると思います。
事務的に処理する介護士さんも減るでしょう。
認知症の方でも、表面に現れた言動からは感じられなくても、葛藤や恥じらいは同じなんだということを重ねて申し上げて、この記事を終わりにしたいと思います。
お付き合いくださり、誠にありがとうございました。
2010*11
2015年加筆