介護記《排泄》part1
《排泄》part1
歳をとって、寝たきりになりたくない一番の理由は、排泄を人の世話になりたくないからだと思います。
自分の子供たちや親戚、ヘルパーさんに下の世話をされたくないと、誰しも思うことでしょう。
なにか、人間としての尊厳が失われてしまうような気がするからだと思います。
これは認知症の方も同じです。
呆けてしまうと、そうしたプライドなどはないように見えるかもしれませんが、違うと思います。
サヨさんは、寝たきりになり、認知症もありましたが、死ぬまでトイレに連れていってほしいと頼んでいました。
ベッドの上で、オムツに用を足すことを嫌がっていました。
恥じらいもプライドもありました。
でも、施設や病院などでは、人手不足もあって一人一人にかける時間はあまりありませんし、寝たきりの方はオムツが当たり前のため、心のケアまでは出来ていないのが現実かもしれません。
家庭の介護でもそうかもしれません。
皆、余裕がないのです。
サヨさんは用を足したくなると、
『看護婦さ~ん、おしっこ。』と必ず家族に言いました。
排泄は看護婦さんの仕事と思っているのか、あえて家族と認識したくないのか、定かではありませんでしたが、用事の時は、
『看護婦さ~ん、』と呼びました。
病院だと思っていたのかもしれません。
『おしっこ?いいよ、オムツにしてください。』と言うと、
『ここで?』と必ず嫌そうな顔をしました。
サヨ『トイレに連れてってよ。』
私『だって歩けないでしょう。』
サヨ『あ~るけ~るよ~~。』
と笑いながら足を動かそうとするのですが、長年寝たきりな上、リハビリを嫌ってしたことがないものですから当然動きません。
すると、とても不思議そうな顔をするのです。笑
私『ね?大丈夫だからオムツにしてくださいね。』
サヨ『ほんとにいいの?あんた替えてくれんの?すいませんねえ。』
こういうやりとりを毎回してから用を足していました。
我が家に引き取られたサヨさんは、リビングにベッドを置いて過ごしていました。
仕切り用のカーテンも取り付けてありましたが、寝る時以外は閉めるごとはなく、排泄の時もオムツだから大丈夫だろうと思っていました。
でもある日、毎回繰り返すやりとりを改めて考えてみて、サヨさんのプライドに気付き、一連のやりとりを済ませた後、
『カーテン引くからね、誰も見てないからね。ゆっくりやっていいからね。』
と声をかけました。
すると、
『はい、ありがとう。』
と安心したようににっこり笑ってくれました。
それからはなるべくカーテンを閉めたり、(排便時はお風呂場といったり来たりするので開けたまま)男性陣には側を離れてもらったりしました。
『オムツ替えるのちっとも嫌じゃないからね。』
と、安心できるような言葉をかけたり、
『た~くさん、してくださいよ~~。』
と笑わせるようなことを言ったりもしました。
サヨさんが変な遠慮をしないためです。
我慢して膀胱炎などになったら、それこそ大変だからです。
幸い母は独身時代に看護士をしていたので手際が良く、私も保育士をしていたので、排泄の片付けには慣れていました。
サヨさんは寝返りもうてなかったので、オムツ交換の技術が必要でした。
時間をかけすぎると体力を消耗し、体も冷えてしまいます。
手際よく取り替えるためには、思いやりだけでは足りません。
ヘルパーさんに習ったり、講習を受けたりして、技術を学ぶことが必要だと思います。
技術がないと、戸惑って時間もかかるし、力の入れ具合が分からずに体を痛めてしまったり、骨折させてしまうこともありますし、余裕もなく、言葉をかけることも出来なくなります。
介護される側や認知症の方は、排泄の始末が一番の心の負担だと思います。遠慮をして、なかなか要望も言えませんので、介護する側が気づくようにしてあげればと思います。
お付き合いいただきましてありがとうございました!
\(^o^)/